大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学
   連合小児発達学研究科 金沢校

こころの相互認知科学講座

発達障害市民ひろば ::::::::::::::::::::::::::::::

第54号 最新医学論文54

オキシトシンが感情推定と凝視行動に与える効果は、ヒト扁桃体の異なる部分の活動変化
を介している。
Different amygdala subregions mediate valence-related and attentional effects of oxytocin in humans.

Proc Natl Acad Sci USA 107:9400-9405;Averbeck BB(2010)Oxytocin and the salience of social cues.Proc Natl Acad Sci USA107:9033-9034

オキシトシンはヒトの様々な社会行動を調節することが判ってきた。その神経学的基盤を明らかにするために、Gramerらは健常被験者の鼻腔内にオキシトシンあるいはプラセボ(偽薬)を投与した後、顔画像を見せて感情を推定させると同時に、機能的核磁気共鳴画像法 (fMRI: functional magnetic resonance imaging)を用いて脳活動の変化を計測した。オキシトシン投与群では、恐れの表情を見せた時の扁桃体前部側方領域および背側領域の活動がプラセボ(偽薬)投与群に比べて低下していた。一方、喜びの表情を見せた時の同じ部位の活動は、オキシトシン投与群ではプラセボ投与群に比べて上昇していた。このような変化は、オキシトシンの抗不安作用に反映されている可能性がある。さらに、凝視行動の観察とfMRI計測を同時に行ったところ、オキシトシン投与群では、顔画像の感情の種類と関係なく目の辺りを凝視する時間が長くなり、扁桃体後部の活動が上昇していた。これらの結果は、オキシトシンが扁桃体の異なる部位を介して異なる作用を発現することを示唆するものであり、オキシトシンを使う精神障害治療の新たな試みに関係してくるかも知れない。