第81号 最新医学論文81

Prosocial effects of oxytocin in two mouse models of autism spectrum disorders

自閉症スペクトラム障害の2つのマウスモデルにおけるオキシトシンの向社会的効果

Teng, B.L. et al.  Neuropharmacology,  2013, pp.1-10

 オキシトシンが自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療に有効であるとして注目されているが、半減期が短いこと、血液脳関門を通過しにくいこと、バソプレシン受容体との親和性によって、その臨床的有用性が制限されている。これらを克服するために、動物モデルによるテストが重要である。

<動物>
 この研究では、自閉症のモデル動物として同定された2種類のマウスが用いられた。BALB/cByJのオスは、社会的嗜好性の障害、高い不安傾向を示す。C58/Jはオス・メスともスリーチャンバーテストで低い社会性を示す。また「social transmission of food preference」パラダイムでも社会的コミュニケーションの障害を示し、jackhammer jumping やbackflippingという明らかに異常な反復的な行動を示す。

<薬剤>
 オキシトシンは0.002%の酢酸を含む生理食塩水に溶解した。単回投与では、Vehicleまたはオキシトシン1.0mg/kg (i.p.)をテスト50分前に注射した。亜慢性投与では、Vehicleまたはオキシトシン1.0mg/kg (i.p.)を最低48時間あけて8~9日間注射し、最後の注射から約24時間後にテストした。

<行動テスト>
 BALB/cByJではスリーチャンバーテストを行った。
 C58/Jでは社会的嗜好性と反復行動のテストを行った。

<結果>
BALB/cByJマウスでスリーチャンバーテストを行った結果、単回投与では社会性を回復することはできなかった。

BALB/cByJマウスで亜慢性投与後、スリーチャンバーテストを行った結果、コホート2、3ともに空のケージ側よりもStranger(知らないマウス)の側で過ごす時間が長くなり、社会性の回復がみられた(A,B)。

スリーチャンバーテストにおいてsniffingの時間を調べたところ、オキシトシン亜慢性投与群の方がVehicle群よりもStrangerに対するsniffingが多く、社会性行動の高まりがみられた(C,D)。

Strangerサイドと空のケージ側に入る回数では、オキシトシン亜慢性投与群とVehicle群で差はなかった(E,F)。

C58/Jマウスのオス(A)またはメス(B)で、オキシトシンの亜慢性投与の24時間後、スリーチャンバーテストを行ったが、オス、メスともに社会性の回復はみられなかった。そこで、1つのグループはもう1週間、もう1つのグループはもう2週間投与を続けた。その結果、オスでは2週間後、メスでは1、2週間後にStrangerサイドにいる時間に変化が見られ、向社会的行動の増加がみられた。

C58/Jマウスにおける反復的行動について、単回投与の結果(A~C)は以下の通りであった:backflipping、繰り返しジャンプするなどのステレオタイプな行動は、20分間のテストのうち、後半10分で減少した(A)。運動量も有意に減少した(B)。グルーミングは後半10分で有意に増加した(C)。
亜慢性投与の結果(D~F)、いずれの指標についても差はみられなかった。

オキシトシンの単回投与で運動量の減少がみられたため、オープンフィールドテストで運動量について調べたところ、2時間のセッション全体では有意差はなかった。オープンフィールドの中央で過ごす時間は増加せず、抗不安効果はみられなかった。

<考察>
 亜慢性投与でみられた向社会的効果について、そのメカニズムはまだ分かっていないが、1つの可能性は、視床下部の内因性オキシトシンがup-regulateされる(すなわち、オキシトシン受容体の発現増加やオキシトシン分泌の増加が起こる)というものである。別の可能性として、オキシトシン系の慢性的な刺激がオキシトシン作動性ニューロンと、それに関連するグリア細胞の構造的な可塑性、リモデリングを促進し、オキシトシン分泌が増加するというものである。

 



大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学
   連合小児発達学研究科 金沢校

こころの相互認知科学講座

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