第93号 最新医学論文93

脂質化オキシトシン類似化合物が細胞内カルシウム濃度、両親養育行動および血漿・脳脊髄液中のオキシトシン濃度に与える構造特異的な効果

Cherepanov, S. et al.
Structure-specific effects of lipidated oxytocin analogs on intracellular calcium levels, parental behavior, and oxytocin concentrations in the plasma and cerebrospinal fluid in mice.
Pharmacology Research & Perspectives 5(1), e00290.
Jan. 17, 2017

概要

 オキシトシンは社会性記憶や社会性行動を調節するホルモンであり、自閉スペクトラム症者の対人コミュニケーション障がいを改善することが期待されている。しかしながら、天然型オキシトシン(以後オキシトシン)は体内で分解されやすいため作用時間が短く、脳血液関門透過性が低いため脳内に移行しにくい。これらの問題点を克服するため、北海道大学の周東らは、脂質化により3つのオキシトシン類似化合物(LOT-1、LOT-2 およびLOT-3)を合成した。さらに金沢大学において、その薬理作用をオキシトシンとともに比較検討した。
 金沢大学子どものこころの発達研究センターのCherepanovらは、まずオキシトシン受容体を安定的に発現させた培養細胞株に各化合物を添加し、細胞内カルシウム濃度の上昇反応を調べた。各化合物の50%効果濃度(EC50)はオキシトシンと比較して高値であった。次に、養育行動(仔運び行動)が障害されているCD38ノックアウトマウスに各化合物を腹腔内注射したところ、異なる行動変化が観察された。LOT-1は投与30分後には効果を示さなかったが、投与24時間後にオキシトシンより効率よく仔運び行動を回復させた。一方、LOT-2は投与30分後の効果はオキシトシンよりも顕著であったが、投与24時間後に効果はほとんど認められなかった。LOT-3の30分、24時間後の効果は顕著ではなかった。 これらの基礎的知見は、オキシトシン類似化合物がそれぞれの構造に特異的な薬物動態をマウス個体内でとることを示しており、社会性記憶、社会性行動を調節する薬物を開発する上で役立つかも知れない。(本論文は、連合小児発達学研究科の博士論文である。)



大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学
   連合小児発達学研究科 金沢校

こころの相互認知科学講座

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